物理化学分野
分子や分子集合体の性質・構造を電子・原子・分子の
視点から解明する
物性物理化学分野の実験分野では、界面活性剤や両親媒性高分子、イオン液体、液晶、金属ナノ粒子などソフトマターの物理化学的性質をさまざまな手法を用いて調べ、さらに、水溶液中におけるこれらの分子集合体のナノ構造をX線・中性子小角散乱、EXAFS、光散乱、透過型電子顕微鏡などで詳しく調べています。また、理論分野の研究では、物質の中の電子・原子・ 分子に対して量子力学や古典力学の方程式を分子動力学や経路積分法、波束の動力学といった物理学の手法を使ってコンピューターで解き、実験からはわからない分子や電子の動きを調べています。これにより、低温における水素やヘリウムの液体の分子の運動やレーザーによる分子の振動励起・緩和機構などの解明が進んでいます。
有機化学分野
有機分子を鍵として持続可能な社会を築く、
新しい機能性材料を開発する
鍵となる物質として有機分子に焦点を当て、環境調和に関する問題や、新しい機能性材料の研究に取り組んでいます。有機合成化学の分野では、多様な有機分子をできるだけ環境負荷の低い方法で変換する合成反応の開発を目指しており、例えば、遷移金属錯体を触媒として、地球上に豊富に存在する酸素を反応剤に利用し、穏和な条件下で有害な副生成物を排出せずに望みの物質だけを選択的に合成できる反応の開発を行っています。また、構造有機化学の分野では、分子やその集合体である結晶構造の対称性に着目した研究を行っており、特に右手と左手のように鏡あわせの関係になるキラリティーという性質を利用した新しい機能性有機分子材料の設計・合成や、その物性の解明に挑戦しています。
無機化学分野
人類の未来に関する諸問題に新しい分子をもちいて
切り込む、
分子レベルから生命の仕組みを解明する
様々な金属原子と有機分子から精密にデザインされた金属錯体を用いて、先端科学技術のための分子材料となり得る新しい機能性物質・分子の開発や、私たちの身体を含めた生体内で重要な役割を担う様々な分子・分子集合体の特性の解明に取り組んでいます。例えば、レアメタルの一種である希土類(レアアース)を活用した単分子磁石や希土類錯体の自己集合を利用した機能性材料、人工光合成系に必須の二酸化炭素固定のための触媒、省資源・省エネルギーにつながるナノスケール分子デバイスの開発を行っています。また、生体内で起こっているタンパク質や酵素が担う現象を模倣できる人工的な金属錯体を合成し、分子レベルで生命体の機能発現の本質を解明することを目指しています。